家庭用のパソコンやタブレットを用いながら、リモートでCGアニメ(デジタル作画)の制作を可能にする。そんな実証実験がスプラッシュトップ、ワコム、NTTドコモ、そして『シン・エヴァンゲリオン劇場版』などの制作でお馴染みのカラーの協力で実施された。
新型コロナウイルス感染症をきっかけに関心が高まっているスタジオを離れた自宅でCG制作作業が可能なのか、どれだけ効率化が出来るのかを探るものである。実証実験では、スプラッシュトップが開発したリモートコンピューティングサービスやNTTドコモの5Gシステム、ワコムの液晶タブレットを用いた。またCGアニメ制作に実績の高いカラーのスタッフが、実際にデジタル作画制作を試みた。
CGアニメ制作には、処理能力の高いワークステーションやセキュリティー環境が整っていることが条件になっている。このためこれまでデジタル作画は、スタジオやオフィスで行うことが大半であった。しかしコロナ禍で、スタジオから離れてのリモートワークが摸索されるようになっている。
リモートワークの実現は、こうした作業環境が自宅で確保できるかが鍵になる。そこで今回は最新の技術を用いることで、不可が少ないかたちでモバイル通信の高い処理速度やセキュリティー確保が可能かを探った。
実証実験では、ドコモが提供するクラウド基盤サービス「ドコモオープンイノベーションクラウド」を利用。分散型コンピュターのエッジサーバーを構築した。そのうえで5G「スタンドアローン(SA)方式」で「クラウドダイレクト」による閉域接続を行い、最大4Kの解像度と60fpsの高フレームレートの画面転送を実現した。
この結果、モバイル通信でのリモート環境を感じさせない結果が確認できたという。セキュリティーを確保しながらオフィス環境と同じ操作性で描画が出来た。今後のアニメCG業界での活用も期待される。
また今回の成果はアニメCG制作だけでなく、建設BIMや製造デザインCAといった幅広いCG作業、セキュリティーが求められる金融やメディアなどでも応用もできそうだ。