東宝第3Q減収減益も、「鬼滅」効果で通期予想を上方修正

ファイナンス決算

 映画大手の東宝が2021年1月12日に、21年2月期第3四半期(3月~11月)の決算発表をした。新型コロナ感染症対策により映画配給・興行、演劇興行などに影響があり、前年比で減収減益となった。
 第3四半期までの売上高は1378億8400万円と31.5%の減少になったほか、営業利益が171億7600万円(59.9%減)、経常利益182億500万円(58.9%減)、当期純利益112億2600万円(61.9%減)だった。利益は大きく下がったが、興行系のエンタテイメント企業の多くが赤字に沈むなかで経営体力の強さを発揮した。

 また第3四半期は、10月に公開したの「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の記録的な大ヒットが経営を押し上げた。本作の興行収入は20年12月末日までで336.6億円と日本歴代興収で史上最高を記録した。11月に公開した『STAND BY ME ドラえもん 2』も好調で、同じく12月末までに23.1億円を稼ぎ出した。
 東宝配給作品の興行収入は10月が前年の5倍以上、11月は11倍以上にもなった。これに合わせて、TOHOシネマズの稼働・興行収入も伸びた。
 さらに年明け後も『鬼滅の刃』の動員が続いているとし、東宝は21年2月期の通期業績予想を上方修正した。連結売上高は1650億円から1860億円に、営業利益は140億円から190億円に、経常利益は155億円から210億円に、当期純利益は90億円から140億円にそれぞれに引き上げられる。

 映画事業は売上高822億7000万円(38.9%減)、営業利益が78億1100万円(72.6%減)。『鬼滅の刃』のほか、『今日から俺は ‼ 劇場版』、『コンフィデンスマンJP プリンセス編』、『映画ドラえもん のび太の新恐竜』がヒット、スタジオジブリ4作品のリバイバル上映も好評を博した。
 製作・配給は黒字を確保したが、興行事業は『鬼滅の刃』のヒットがあったものの4月中旬から5月中旬の休館や感染予防措置のための座席販売措置、洋画の開延期などで赤字に沈んだ。
アニメ製作事業収入は86億7600万円で26.6%増と好調、今後の人気が期待されるテレビアニメ『呪術廻戦』に製作出資もしている。24.2%増のパッケージ事業収入62億4300万円も、ヒット作『天気の子』のパッケージ販売に支えられた。

 演劇事業は依然厳しい。第3四半期で赤字幅は縮小したが、引き続き新型コロナウイルス感染症の影響が大きい。売上高は47億9300万円(62.7%減)、営業損失が10億4300万円である。  
 不動産事業は堅調だったが、不動産賃貸事業で商業施設の営業時間短縮や臨時休館に伴い賃料の免除や入居テナントに対する賃料減額の措置もあり減収減益だった。売上高は210億9800万円(5.1%減)、営業利益が96億1100万円(0.6%減)だ。

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