三菱UFJ銀行がK2 Picturesの映画製作ファンドに出資 映画ファイナンスの開発を目指す

K2Pictures

 国内銀行最大手の三菱UFJ銀行が、劇場映画へのファイナンスに積極的に乗り出している。2025年7月31日、三菱UFJ銀行はK2 Picturesが運用する映画製作ファンド「K2P Film Fund Ⅰ」に出資することを明らかにした。
 三菱UFJ銀行は出資を通じて、映画製作のビジネスモデルとリスク構造への理解を深め、完成保証スキームをはじめとする新たな資金調達手法の開発を目指す。K2P Film Fund Ⅰに金融機関が出資するのは、三菱UFJ銀行が初めてとなる。

 K2 Pictures は、東映出身の紀伊宗之氏が「日本映画の新しい生態系をつくる」を掲げて2023年8 月に設立された映画製作・コンテンツファンド事業の会社。ファンドを通じてこれまでとは異なる投資家を国内外から日本映画産業に呼び込むことで、日本映画の資金調達と利益配分の新たな構造を築くとしている。パートナーとして岩井俊二氏、是枝裕和氏、西川美和氏、三池崇史氏といった著名監督に加えて、アニメ会社のMAPPAも参加している。
 2024年5月には最初のファンドとなる「K2P Film Fund Ⅰ」を立ち上げた。設立にあたっては100億円規模の資金調達を目指すと語られている。現在は複数の映画製作に取り組んでいる。大手金融機関の出資参加で、資金面だけでなくファンドの信頼性についても大きなサポートが得られそうだ。

 三菱UFJ銀行はこれ以外にも、2025年6月に三菱UFJ信託銀行とクレデウスと協力するJapan Creative Works1 号投資事業有限責任組合にも出資している。
 こちらは講談社と映画制作会社のクレデウスが組成する映画制作母体「合同会社CK WORKS」に資金を提供する。三菱UFJ銀行が資金を拠出、三菱UFJ信託が組成・運用する枠組みだ。合同会社CK WORKSは講談社が出版する著作物を原作に、劇場公開の実写シリーズ映画を制作する。

 世界の映画業界では、金融機関による映画やコンテンツへの投資は広く実施されている。しかし、日本ではこれまで映画業界内部での出資や製作委員会方式が主流で、大規模なコンテンツファンドはほとんど用いられていない。映画業界内で資金調達が可能であったことや、金融機関にコンテンツビジネスの理解やノウハウがなかったことが理由だ。
 しかし近年は、映画製作の作品大型化や制作費の高騰で、より大きな資金調達が必要になっている。製作委員会だけで対応することが難しいケースも増えている。さらに金融機関側は、そこに新しいビジネスチャンスを見出している。三菱UFJ銀行だけでなく、今後はさらなるコンテンツファンドの試みが増える可能性がある。

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