11月2日に発表された2024年第2四半期決算でアニメ事業の好調ぶりが際立ったKDOKAWAだが、今後の事業拡大でもアニメ重視を強く打ち出す。11月2日には、2024年3月期から2028年3月期に向けた中期経営計画も発表されたが、このなかでアニメを成長ドライブのひとつに位置づけている。
KADOKAWAは世界的な映像配信の普及によりアニメIPの需要は拡大を続けており、さらにそれがマンガや小説、商品、イベントといったアニメ周辺分野の世界的な需要も広げているとする。そこで海外でもメディアミックス展開をすることで、この分野の事業拡大を目指す。
一方でメディアミックスからの収益となると、より幅広い分野でアニメ作品の窓口権を持つ必要がある。そのためには、製作出資にもこれまで以上に多くの金額を投じることになるだろう。
実際にKADOKAWAは今回の中期経営計画で、権利ビジネスの強化を打ち出した。まずはライセンス戦略の筆頭に「アニメのオールライツでの権利運用の推進」を掲げる。オールライツの獲得のためには製作金額の多くを自社グループで負担することになるので、今後KADOKAWAのアニメ投資はかなり拡大する可能性がある。
さらにKADOKAWAの戦略で興味深いのは、アニメ作品の制作強化もあげていることだ。ひとつは作品の長さを伸ばすことだ。1タイトル当たりのシーズン数や話数を増やすとしている。作品の寿命を伸ばすことで、しっかりとライセンスビジネス展開を進められるというわけだ。
しかし作品を機動的に制作するには、現状のアニメ業界全体のスタジオ不足、人材不足がハードルになる。そこでKADOKAWAはアニメーション制作の内製化を進めることにした。
現在はKADOKAWAは、ENGI、StudioKADAN、キネマシトラスなどのアニメスタジオに出資している。こうしたスタジオがKADOKAWAのアニメーション制作をすることも多い。
これに加えて今後は、さらに100%出資のスタジオ新設やM&Aによる買収、さらなるアライアンスなどをすることで、グループ内での制作拡大を目指す。KADOKAWAは現在、年に40タイトル以上に出資するが、グループ内でのアニメーション制作は5本程度。これを年20本体制に持っていく。
こうした戦略はライバル企業の動向からも影響を受けているはずだ。バンダイナムコグループやアニプレックスなどのアニメ事業の大手は、有力タイトルは自社グループ内で多く出資することで、国内外で作品のビジネスをコントロールしているからだ。KADOKAWAもこうしたかたちのビジネスを目指すことになる。
KADOKAWAがバンダイナムコグループやアニプレックスと異なる強みは、出版だろう。マンガやライトノベルなど豊富な原作を持つ。自社原作をもとに自社グループで制作し、さらにオールライツビジネスが軌道に乗れば、一気通貫のアニメビジネスが完成する。KADOKAWAはこれに合せて今回、出版とアニメのライセンス部門を統合し、グローバルライツ局を新設した。今後は領域を超えてビジネスを融合させることで効率化し、収益の伸びも期待することになる。