首都圏キー局のひとつであるテレビ朝日がアニメ事業を重視し、さらに新しいアニメ事業領域開拓に取り組む。2023年3月2日、テレビ朝日は新経営計画「2023-2025」を発表、今後3年間の経営の方向性を示した。
このなかの5つの戦略のひとつに「新領域開拓」が挙げられ、その中心にアニメが据えられている。アニメを軸に様々な事業展開を目指す。
新経営画では、いくつか象徴的な言葉が述べられている。ひとつは「コンテンツ」、もうひとつは「360°」だ。価値あるコンテンツから放送や配信、ライブイベント、ショッピングなど幅広い分野に事業を広げていく。
放送局というよりも、放送は創造したコンテンツを広げていく手段のひとつとの位置づけだ。大手放送局のアイデンティの新たな移行が挑戦的だ。
個別戦略は、①地上波戦略、②インターネット戦略、③ショッピング戦略、④メディアシティ戦略、⑤新領域開拓の5つから構成される。戦略投資のために500億円の枠を用意する。主な投資は東京・有明のエンタメ施設「東京ドリームパーク」の建設になるが、IP開発も重点領域のひとつだ。
「新領域開拓」では、さらにふたつの戦略に細分化されている。ひとつは「新規アニメIP」の開発。もうひとつは「新たなアニメ事業の創出」である。
新規IPでは大ヒット作になった『ユーリ!!!on ICE』に続く、オリジナルヒットIPを開発するとしている。また大きなヒットが見込める有力原作のアニメ化権獲得もIP開発の一環だ。
テレビ朝日では、これまでにも「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」といったビッグタイトルを保有している。両タイトルを制作するシンエイ動画はテレビ朝日のグループ会社でもある。
一方で新規タイトルの開発では、他のキー局と較べると動きが鈍い。2020年からは深夜アニメ枠「NUMAnimation(ヌマニメーション)」を設けるが、主幹事となって製作中心になる作品への取り組みはごく最近だ。今後は製作投資にも力を入れることになりそうだ。
アニメの事業創出の鍵は、「ゲーム」、「国際展開」、「コミカライズ」になる。まず『ブルーロック』のような自社アニメのゲーム化を推進する。同時にゲーム化を前提としてアニメ開発を進める。
さらに海外の配信プラットフォームや配給会社と連動することで、作品のグローバルなビジネスを目指す。ゲーム化に加えてマンガ化やWebtoonのビジネスにも取り組むという。アニメのジャンル単体がテレビ朝日の掲げる「360°」を体現するかたちだ。