ディズニーは9月10日に21年秋冬シーズンの主要作品の北米劇場公開日、そして自社映像プラットフォーム「Disney+」での配信戦略を発表した。発表した全ての作品で全米公開を実施、期間が過ぎた後に「Disney+」での配信がスタートする。
ディズニーは新型コロナ感染症拡大で劇場の一部が休館、観客動員も鈍っていることを理由に、昨年秋より配信重視の戦略をとってきた。実写版『ムーラン』や『あの夏のルカ』などでは劇場公開は止め配信独占、『ブラック・ウィドウ』では公開日と同時配信などとしてきた。また配信も別料金課金や定額課金内など様々なパターンを取ってきた。しかし10月から12月にかけては、劇場公開を先行させることになる。
アニメーション映画では、ディズニー・アニメーション・スタジオによるミュージカル映画『ミラベルと魔法だらけの家』を11月24日に公開する。日本公開は11月26日と米国とほぼ同時だ。20世紀スタジオの『ロン 僕のポンコツ・ボット』が10月22日公開となる。
実写映画は、10月15日に『最後の決闘裁判』、11月5日に『エターナルズ』、12月10日に『ウエスト・サイド・ストーリー』、11月22日に『The King’s Man』を封切る。
ディズニーによれば今年の夏の映画興行の好調を踏まえたものだ。劇場に人が戻ってきたとの判断がありそうだ。
ただ理由はそれだけでない。配信重視は利益率が高い配信ビジネスの成長加速を念頭に置いたものされていた。それに対して劇場経営者から不満が大きく、配給と興行の摩擦が起きていたためである。興行サイドを意識した折衷案とも見える。
実際に劇場公開と配信の仕組みは従来どおりでない。これまでは公開から3ヵ月、半年と期間がながかった配信開始までの期間は45日間に大幅に圧縮される。これは公開から興行がおおむね収束する6週間程度を念頭に置いているとみられる。
ただし『ミラベルと魔法だらけの家』のみは公開から1ヵ月後と、さらに短くなっている。これはクリスマスに合わせた配信開始で「Disney+」での話題づくりを狙っているとみられる。
今回は再び劇場先行が戻ってきたが、映画業界における配信の存在感はますます強くなっている。有力作品の囲い込みも強まっているだけに、今後もこれが続くかは確かではない。状況はまだまだ流動的といってよさそうだ。