テレビ東京が、中国でのアニメ事業拡大にまた一歩アクセルを踏む。2019年12月18日、テレビ東京は2020年2月の予定で、中国・杭州市に現地法人の杭州都之漫文化創意有限公司(仮)を設立すると発表した。
設立の目的は中国におけるアニメの共同制作で、同国の大手制作会社と共同でのアニメづくりを目指す。現地法人では制作だけでなく、アニメ権利の確保と中国内外のライセンスビジネスも視野に入れている。会社を統括する董事長・総経理には、テレビ東京アニメ・ライツ本部長の川崎由紀夫氏が就任する予定だ。
資本金は日本円で20億円(1億2500万人民元)で、テレビ東京が全額出資する。中国向けの直接投資としてかなり大規模になる。テレビ東京が新会社に賭ける心意気を感じさせるのに十分だ。
テレビ東京は同じく杭州市に現地法人の杭州都愛漫貿易有限公司をすでに設立している。こちらはアニメグッズの企画開発、商品化ライセンスの窓口を中心に手がけている。今回の新会社と連動することで、企画・製作からら二次展開までが自社グループで一気通貫する。
テレビ東京はこれまでも、アニメビジネスに強い放送局として知られてきた。売上高と利益は近年さらに急成長しており、アニメ事業だけで直近で年間200億円超の売上高がある。
成長エンジンとなっているのが、中国ビジネスの成長だ。日本企業のなかではいち早く、中国向けの正規配信へのライセンス提供、日中同日配信に取り組んできた。こうした仕組みの確立が、近年の中国での日本アニメ人気の高まりにつながっている。
しかし昨今は現地での配信番組の表現規制や番組の現地化の流れが強まっている。中国による日本アニメのライセンス購入は勢いが急速に衰えている。テレビ東京は企画・製作で中国に進出して、引き続き中国ビジネスで利益を生み出す攻めの戦略でこれを乗り越えようとする。
テレビ東京は2000年代後半よりたびたび中国での共同製作に、取り組んできた。ただ大ヒットに及んだ作品がない。日本と中国の双方でヒットを狙う二兎を追う戦略がうまく回らなかったのが理由とも考えられる。
そこで今回はターゲットを日本ではなく、むしろ成長する中国市場にフォーカスする。現地のファンの多様化や中国発のアニメの増加を踏まえて、日本からの番組の供給だけではなく、現地に根差した作品を現地で共同制作する。中国に向けた作品を中国で企画・製作するわけだ。
こうした傾向はテレビ東京にとどまらない。ソニーミュージックグループのアニプレックスやバンダイナムコグループも現地法人設立によるダイレクトな中国進出を進めている。中国アニメビジネスの新たなトレンドになりつつある。
現地法人による中国独自のビジネス基盤の確立。中国のアニメビジネス環境で、これがアニメビジネスの現地化が次の切り札になるか、今後の試金石になりそうだ。