IGポート通期売上149億円 前年比23%増と予想から上振れ

ファイナンス決算

[売上高過去最高、予想を超える伸び]
 アニメ大手IGポートの2025年5月期通期決算が発表された。近年、堅調な成長を続けるが、25年5月期も通期連結で売上高145億9800万円(前年比23.3%増)と好調を維持した。これは当初予想の129億9300万円を大きく上回る。
 一方で利益面では営業利益は14億2600万円(16.4%増)と前年比で伸びたが、当初予想の14億2600万円から下振れした。経常利益14億2000万円(2.9%増)、当期純利も8億2800万円(28.5%減)も同様に予想を下回った。これらは制作事業で損失が膨らんだためである。依然、同社にとってアニメーション制作のコスト上昇が課題になっている。

[売上増加も損失拡大、制作事業]
 映像制作事業はプロダクション I.Gとウィットスタジオによるアニメーション制作が売上げの中心だ。通期売上高は73億1800万円と前年比17.9%増だが、営業損失も前期の9億4000万円から11億100万円に拡大した。人件費、CG制作費、外注費などの高騰に加えて、制作期間の長期化がコスト増につながっている。一部の作品では受注損失引当金を計上した。
 また期中、24年6月には傘下のアニメスタジオ・シグナル・エムディのプロダクション IGへの吸収合併を行った。同社は長期にわたり累積損失が積み重なっており、スタジオを統合で販売管理費などのコスト削減をする。

 IGポートでは期間中に『ムーンライズ』、『YAIBA』の大型納品があったほか、テレビアニメでは『春夏秋冬代行者 春の舞』、『怪獣8号』第2期、『SPY × FAMILY Season 3』、劇場アニメでは『劇場版ハイキュー!! VS 小さな巨人』、配信シリーズでは『THE ONE PIECE』、『Star Wars Visions Presents -The Ninth Jedi』の制作を進めている。

[劇場版ハイキュー!!が牽引した版権事業]
 版権事業は売上高は39億5600万円(31.7%増)、営業利益は19億3400万円(6.1%増)の増収増益。劇場映画が大ヒットした『ハイキュー!!』 が興行収入分配金のほか、国内商品、海外販売も好調で全体を牽引した。同作が版権事業売上全体の24.5%を占めた。また『進撃の巨人』、『怪獣8号』も含めて3作品で全体の半分を超えた。
 それでもこのほか『SPY × FAMILY』、『魔法使いの嫁』、『PSYCHO-PASS サイコパス』、『攻殻機動隊』が主力作品が多い。IGポートの版権事業は旧作も含めたバランスのとれたポートフォリオが特徴になっている。

[急成長する商品部門は3年後に期待]
 商品販売事業が大きく伸びている。事業売上高は8億7000万円と前年の2億7000万円から約3倍となり、営業利益は3億7700万円のプラスに転じた。海外企業への店舗開設許諾金が含まれたことで売り上げが大きく伸びたが、『SPY × FAMILY』や『進撃の巨人』を中心に自社商品の強化も進んでいる。
 商品売上高は前年の2億9800万円から25年3月期は13億6000万円と大きく伸びた。さらに26年5月期には45億円、27年5月期59億円、28年には111億円まで拡大する計画である。海外市場も視野に入れて、急速な成長を目指す。
 成長を実現できれば新たな主力部門として、事業全体での重要性も増す。IGポートは2月にキャラクター大手のサンリオと資本業務提携をしたばかりで、同社との連携も期待できるかもしれない。

 出版事業は売上高22億2400万円(4.8%減)、営業利益3億4800万円(27.7%減)の減収減益と不調だった。これまで電子書籍を牽引してきた「なろう系」や「異世界転生系」の販売が伸び悩みんだ。
 主力タイトルは2024年夏にアニメ化『魔導具師ダリヤはうつむかない~Dahliya Wilts No More~』、『転生貴族の異世界冒険録』、『リィンカーネーションの花弁』など。

[新たな中期経営計画、28年5月期に売上240億円]
 さらにIGポートで注目されるのは、今後の見通しだ。2026年5月期の連結売上予想は157億円、経常利益16億5900万円と前期をさらに上回る。いずれも過去最高である。出版、版権は減収減益を見通すが、映像制作が高い伸びになる。
 今回同時に発表された中期経営計画では、売上の計画が前回より大きく上方修正されている。27年5月期は売上174億3000万円、28年5月期の売上は240億円と高い数字だ。また28年5月期には経常利益は24億円を超えるとしている。決算資料では、今後予定する複数の大型作品にたびたび言及されており、現在持っている受注残なども含めて、今後の事業成長に自信を深めているようだ。

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