
世界的に知られる日本のアニメ監督・湯浅政明の最新劇場アニメーション映画の製作が発表された。吉本ばななの小説を映像化する『ひな菊の人生』だ。幼い頃に唯一の家族であた母を亡くしたひな菊を主人公にした物語である。
アニメーション制作は2025年2月に湯浅監督自身のスタジオとして設立が発表されたame pippin、脚本に『散歩する侵略者』『トウキョウソナタ』など実写映画で活躍する田中幸子、幼少期のキャラクター原案を現代アーティストの奈良美智が手掛ける。
2026年全国公開予定だが、本作は2025年6月にフランスで開催される世界最大のアニメーション映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭でいち早く制作の様子が紹介される。今後の話題作を集めたWork in Progress 部門の選出も決まった。現地時間6月13日に湯浅政明監督らが登壇し、制作進行中の本作をプレゼンテーションする。ここで作品世界の一端が紹介される。
湯浅政明は斬新な演出、アニメーションの動きの楽しさ、映像の魅力で世界で高く評価される日本を代表する監督だ。2004年の『マインド・ゲーム』が出世作。『夜明け告げるルーのうた』でのアヌシー国際アニメーション映画祭長編部門のグランプリ、『夜は短し歩けよ乙女』ではオタワ国際アニメーション映画祭でグランプリなど、世界でのアワードの受賞は数えきれない。
2021年に公開された『犬王』以後は長期の休養にはいっていたが、そこから約5年ぶりで待望の新作長編となる。
そうした期待に応えるかのようなサプライズな制作の枠組みが目を惹く。ひとつは大物クリエイターの集結である。原作の吉本ばななは日本で最も海外に知られた作家のひとり、キャラクター原案に参加する奈良美智は世界で最も注目される現代アーティストと、「アニメーション」「小説」「アート」の大物が一堂に会する。
アニメーション制作のame pippinには、湯浅監督のほかアスミック・エース、アニプレックス、コミックス・ウェーブ・フィルムと日本のアニメ業界を代表する会社が参加する。『君の名は。』や『すずめの戸締り』のコミックス・ウェーブ・フィルムの参加は話題を呼びそうだ。
また海外ファンの多い湯浅作品ならの取り組みも目立つ。ひとつはフランスのアニメーション製作会社Miyu Productionsの制作参加である。Miyuは挑戦的企画を次々に手がけることで、近年、急激に成長する映画会社で日本との取り組みも多い。2024年にはシンエイ動画と『化け猫あんずちゃん』を共同製作して注目を浴びた。
本作は最初の本格的な紹介がアヌシー国際アニメーション映画祭になるように、当初から海外に目を向けた展開を念頭に置いている。『ひな菊の人生』は2026年の世界のアニメーション界で最重要の作品になることは間違いないだろう。
『ひな菊の人生』(英題:Daisy’s Life)
2026 年全国公開
原作:「ひな菊の人生」吉本ばなな(幻冬舎文庫刊)
監督: 湯浅政明
キャラクター原案(幼少期): 奈良美智
脚本: 田中幸子
アニメーション制作: ame pippin、Miyu Productions
製作: Daisy’s Life Film Partners (日仏共同製作)
イラスト:「ひな菊の人生」(吉本ばなな著 絵・奈良美智/幻冬舎文庫刊)