日中の大手エンタイメント企業の大型提携が発表された。KADOKAWAは中国のエンタメ・IT企業テンセントとの資本業務提携を発表した。KADOKAWAは新たに486万2200株の新株式を11月中に発行し、テンセントグループの中核会社Sixjoy Hong Kong Limitedが第三者割当で1株6170円にてこれを引き受ける。
新株発行でKADOKAWAは約300億円の資金調達をすると同時に、テンセントと協力することで中国を含む世界戦略を強化する。KADOKAWAは今年2月にも、サイバーエージェントとソニーグループを第三者割当引受先に100億円を調達している。相次ぐ資金調達でKADOKAWAの投資余力は増しており、エンタテイメント業界の関心を集めそうだ。
KADOKAWAは、出版のほか、映画、アニメ、ゲーム、動画プラットフォーム、教育などの多様な事業を手がける。なかでも若者向けのライトノベルやアニメなどを得意とし、知名度が高い。
一方テンセントは中国・深センに本拠を持つIT企業だ。チャットアプリなどで急成長し、世界有数の巨大IT企業に育った。特にゲームアプリやエンタメも得意とする。KADOKAWAはこれまでも中国での出版事業の合弁会社広州天聞角川動漫有限公司などを通じて協業を続けてきた。資本業務提携は、こうした関係を一層強化する。
新株発行は、テンセントとの業務提携以外にも理由がありそうだ。ひとつはKADOKAWAの安定株主対策である。KADOKAWAは2014年のドワンゴとの経営統合でドワンゴの大株主であった川上量生氏がそのまま大株主となったが、近年川上氏が株式売却を進めており、浮動株が増えている。他方で韓国カカオ系のファンドが株式取得を進め、持株比率が高まっていた。
こうしたなかで安定した大株主、バランスのとれた株主構成を目指すべく、サイバーエージェント、ソニーグループ、テンセントと相次いで資本提携を結んだとみられる。第三者割当後は、機関投資家以外ではカカオ系の投資ファンドKSD-NHが第2位(8.30%)、テンセントのグループ会社Sixjoy Hong Kongが第3位(6.86%)、川上量生氏が第4位(5.77%)、日本電信電話が第6位(2.87%)、バンダイナムコホールディングスが第7位(2.16%)、角川歴彦氏が第8位(2.05%)、サイバーエージェントとソニーグループが第9位(各2.0%)と株主に並ぶ。
もうひとつの理由は資金需要である。現在日本のアニメ、マンガ、ライトノベルなどの需要が世界的に高まっており、KADOKAWAはこうした分野で積極的にグローバル戦略を進めている。アニメや映画への製作投資強化、書籍の出版点数の増加も掲げる。
こうした投資のための資金は、十分過ぎることはない。現在KADOKAWAの株価は歴史的な高値圏にあり、2年前のほぼ4倍にもなる。少ない株式で多くの資金が調達でき、新株式発行には絶好のタイミングでもある。
KADOKAWAは今回の調達資金の用途として、出版編集者の確保、アニメや映画のプロデューサーの確保、アニメスタジオや制作設備の増強、アニメやゲームの制作投資、製作委員会出資、コンテンツ企業への投資などを挙げている。コンテンツ創出に重点投資するとみられる。