KADOKAWAがグローバルの電子出版事業の拡充に向けて、新たなビジネスを獲得した。2021年4月28日、米国で日本のライトノベルの翻訳出版事業を手がけるJ-Novel Club LLC買収を発表した。買収金額やJ-Novel Clubの売上高、利益などは明らかにされていない。
J-Novel Clubは、日本のライトノベルの翻訳版の英語電子出版とサブスクリプションサービスを展開している。2016 年にサミュエル・ピナンスキー氏がテキサス州で設立した新興企業だが、ライトノベル需要の拡大で、急成長を続けている。
ピナンスキー氏は今回の会社譲渡について、「この会社をこれからさらに大きくするためには、BOOK☆WALKERをはじめ、KADOKAWA グループと一緒になることが最善の選択肢と判断しました」と述べている。同氏は新たにJ-Novel Club のマネージングディレクターに就任した。
J-Novel ClubはKADOKAWA作品だけでなく日本の出版社のライトノベルを手がける。大きな特徴は、電子出版に特化してマーケットを開拓してきたことだ。特に定額で様々な作品を読めるサブスクリプションサービスを効果的に活用する。
まずサブスクリプションで日本での出版に遅れることなくチャプターの先行配信をする。日本と時差を縮めることでファンのニーズに応え、さらに新作のプロモーションにつなげる。その後は、電子書籍を通じて主要なオンラインストアで販売する。KADOKAWAはこの戦略を独自で先駆的、ユニークな事業モデルと高く評価する。
KADOKAWAによれば、世界では日本のアニメ市場の拡大と共に、作品の原作となるライトノベル市場も拡大している。特に北米を中心とする英語圏は好調で、今後はさらなる成長を見込めるという。有力企業を取り込むことで成長分野にて積極的に自社ビジネスを拡大する構えだ。
もともとライトノベル市場は、国内でもKADOKAWAが得意とする。電撃や富士見書房などいくつもの有力レーベルを持ち、近年はそれら作品のデジタル展開や映像化が大きなビジネスとなっている。電子書籍事業では、グループ会社のブックウォーカーが大きな実績を残している。
英語圏市場における展開も積極的である。英語圏向け電子書籍ストア「BOOK☆WALKER Global」を設立、2016年には米国のマンガ翻訳の有力出版社YenPress,LLCも買収している。同社は近年はライトノベルレーベル「YenOn」も立上げ、この分野に積極的に取り組んできた。紙出版も強いYenPresとサブスクリプションサービスのマーケットを持つJ-Novel Clubが手を組むことでシナジー効果による市場拡大も期待出来る。
J-Novel Club がKADOKAWAグループに加わり、英語圏でのライトノベル翻訳出版でのKADOKAWAの市場影響力が強まりそうだ。
J-Novel Club https://j-novel.club/
BOOK☆WALKER Global https://global.bookwalker.jp/
YenPress https://yenpress.com/