コロナ禍が広がるなか、エンタテイメント業界の企業業績にも影響が及び始めている。そのなかで新興エンタテイメント企業のブシロードは、敢えて攻めの姿勢を目指す。
ブシロードは2020年7月30日に、SBI証券を割り当て先とした転換社債型の新株予約権付社債50億円を8月17日付発行すると発表した。社債の利率0%で償還期限は23年8月16日、ブシロードは無利子で資金を調達する。
SBI証券は期間中、当初は1株あたり5000円で社債をブシロードの株に転換できる。ブシロードの株価は7月30日の終値で2510円となっている。期間中に株価が上昇して5000円を超えれば、SBI証券は安価で株式を取得でき、株価が上がらなくとも3年後に元本は確保できる。
このタイミングでの資金調達について、ブシロードは「IP開発」の強化と「M&A/資本業務提携」を理由に挙げる。
IP開発は具体的には、自社出資によるアニメ制作になる。50億円のうち20億5000万円をアニメ制作費に充当する。具体的な作品タイトルはテレビシリーズでは、『D4DJ』、『アサルトリリィBOUQUET』、『カードファイト!! ヴァンガード』、劇場映画では『BanG Dream!』、『少女歌劇 レヴュースタァライト』である。
ブシロードは昨年(2019年)7月の株式上場に合わせた36億5000万円の公募増資でも、18億6000万円をアニメ制作費としていた。今回と合わせると短期間で約39億円をアニメ制作に注ぎ込むことになる。
相次ぐアニメ製作投資は、作品の認知度の拡大を目的としている。映像を通じたコンテンツブランドの強化を重要視していることがわかる。
「M&A/資本業務提携」は、残りの29億3400万円を充当する予定だ。ただし目先に案件があるわけでない。案件が発生した時に、機動的に動けるための準備金との位置づけだ。
ブシロードは同業他社などに対する M&Aや資本業務提携を事業拡大の大きな手段としている。これまでに劇団飛行船を子会社化、アニメーション制作のキネマシトラスやサンジゲン、電子コミック配信サービスのリンガ・フランカに出資している。
アニメをはじめとするコンテンツ・エンタテイメント業界は現在、大きな変革期にあり、業界再編が進んでいる。コロナ禍をきっかけに再編機運はさらに加速化する可能性が高い。ブシロードでは、数億円から十数億円規模の案件を視野に今後もM&Aと資本業務提携を推進する。より大きく、パワフルになることで激動の時代を勝ち抜く方針だ。