「空の青さを知る人よ」オフィシャルコンペ シッチェス映画祭に日本アニメ多数ノミネート

シッチェス・カタロニア国際映画祭(Festival Internacional de Cinema Fantàstic de Catalunya)

 10月5日から13日まで、スペインで開催されるシッチェス・カタロニア国際映画祭(Festival Internacional de Cinema Fantàstic de Catalunya)で、今年も日本のアニメが活躍しそうだ。映画祭はこのほど2019年のオフィシャル上映作品のライナップを一挙公開したが、日本のアニメが多数ノミネート対象になった。
 なかでも注目されるのは、実写映画も含めた幅広い中から最高峰を決定するオフィシャル・ファンタスティック・セレクションにアニメ作品が選ばれていることだ。長編コンペには長井龍雪監督の『空の青さを知る人よ』、短編コンペには久保雄太郎監督・米谷聡美監督の『とつくにの少女』が入った。両部門とも日本から実写映画のコンペインはないなかでの、珍しいかたちとなった。いずれもアニメーション部門でも選考対象となる。

 『空の青さを知る人よ』は、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』、『心が叫びたがってるんだ。』に続く、長井龍雪監督、脚本・岡田麿里、キャラクターデザイン・田中将賀のチームによる最新作。同部門は最優秀作品賞や監督賞、脚本賞の対象にもなる。アニメーションから選ばれたのは、『空の青さを知る人よ』とフランスの『I Lost My Body』の2作品のみだ。
 『とつくにの少女』は、ながべ原作のマンガをWIT STUDIOのアニメーション制作で映像化した。異形の者が住む外の世界と、人間が住む内の世界に住むふたりを軸にしたファンタジーストーリーになる。
 
 シッチェス映画祭は、SFやファンタジー、ホラー、サスペンス、アクション、時代ものなどジャンル映画と呼ばれる分野に特化した映画祭だ。1968年にスタートして、今年で52回目を迎える。
 カンヌやベルリンといった映画祭に較べてエンターテイメント色の強い作品が並ぶ。近年のジャンル映画への関心の高まりと共に、現在は世界有数の国際映画祭として知られている。

 例年日本映画が多数ノミネートされることで知られている。なかでもアニメはとりわけ日本が活躍する分野だ。昨年は『未来のミライ』が、一昨年は『君の名は。』、さらにその前年は『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』が長編アニメーション最優秀作品賞に輝くなど、受賞も数多い。
 2019年も「Anima’t」と呼ばれるアニメーション部門には、多数の日本アニメが選ばれている。長編アニメーション部門は6作品のうち木崎文智監督の『HUMAN LOST 人間失格』、湯浅政明監督『きみと、波にのれたら』、原恵一監督『バースデー・ワンダーランド』の3作品。これにオフィシャル・ファンタスティック・セレクションの『空の青さを知る人よ』と『I Lost My Body』も含めた8作品が選考対象になる。アヌシー国際アニメーション映画祭グランプリ『I Lost My Body』、CONTRECHAMP賞の『Away』など有力作品も多いが、半数が日本作品だ。

 短編アニメーション部門(Anima’t Cortos)にも注目したい。押山清高監督の『シシガリ』がノミネートされている。オフィシャルセレクションは18作品。
 このほかアワードの対象にならないアニメーション部門特別上映が2作品。こちらは新海誠監督の『天気の子』と大塚隆史監督の『ONE PIECE STAMPEDE』といずれも日本作品だ。
 
 『空の青さを知る人よ』と同様、アニメーション部門以外でノミネートされた長編作品もある。ニュービジョン部門(Noves Visions)には渡辺歩監督の『海獣の子供』が選ばれた。こちらは全26作品。日本の実写映画でも『ダンシング・マリー』(SABU監督)、『来る』(中島哲也監督)、『愛なき森で叫べ』(園子温監督)、『ウィーアーリトルゾンビーズ』(‎長久允監督)の4作品がコンペインした。
 
シッチェス・カタロニア国際映画祭
(Festival Internacional de Cinema Fantàstic de Catalunya)

https://sitgesfilmfestival.com/eng

[日本からのアニメーションでのコンペテイション作品]

【オフィシャル・ファンタスティック・コンペティション(長編)】
『空の青さを知る人よ』(長井龍雪監督)

【オフィシャル・ファンタスティック・コンペティション(短編)】
『とつくにの少女』(久保雄太郎監督、米谷聡美監督)

【アニメーション部門(長編)】
『HUMAN LOST 人間失格』(木崎文智監督)
『きみと、波にのれたら』(湯浅政明監督)
『バースデー・ワンダーランド』(原恵一監督)

【アニメーション部門(短編)】
『シシガリ』(押山清高監督)

【ニュービジョン部門】
『海獣の子供』(渡辺歩監督)

[特別上映の日本アニメーション]
『天気の子』(新海誠監督)
『ONE PIECE STAMPEDE』(大塚隆史監督)

関連記事

アーカイブ

カテゴリー

ピックアップ記事

  1. 第2回新潟国際アニメーション映画祭
     今年3月に初開催されて話題を呼んだ新潟国際アニメーション映画祭が、2024年3月に第2回を迎える。…
  2. 「アニメーションの表現」
     2023年10月23日から11月1日まで開催されている第36回東京国際映画祭は、昨年より上映本数、…
  3. 『いきものさん』© 和田淳・ニューディアー/東映アニメーション
     日本を代表するアニメーション作家として、いま“和田淳”を筆頭に挙げる人は多いだろう。2010年に『…
ページ上部へ戻る