アニメ制作の彩色をディープラーニングで自動化 OLM、イマジカ、奈良先端大学が共同開発

イマジカグループ

 制作現場で深刻化する人手不足対策も目指し、アニメーション制作の彩色工程を自動化する技術開発が進められている。イマジカグループ アドバンスドリサーチグループとオー・エル・エム・デジタルは、奈良先端科学技術大学院大学の研究グループと協力してアニメーション制作の自動彩色技術を開発した。
 奈良先端大学の向川教授・舩冨准教授・久保助教らの研究グループと中村教授らの研究グループが持つ大量のデータを蓄積・解析するディープラーニングの技術を活用した。動画に描かれた絵のかたちから適切な色を選択し、自動的に彩色を行うという。

 アニメーション制作の彩色は、アニメーターが描いた絵に設定に合わせた色彩を塗る作業だ。かつてはアニメーターが描いた動画をセルと呼ばれるプラスチック版に移しとり、そのうえに人の手で絵の具で色付けをしていた。1990年代終りから2000年にかけて、これがコンピューターに読み込まれた動画にデジタルで色指定をするデジタル彩色に移行した。
 デジタル彩色の移行で大幅な効率化がされたが、それでも細かな色指定は人の手で行われている。アニメーション制作工程の中では、彩色は作画と共にとりわけ人手がかかる。この部分を自動化することで制作の負担を軽くする。

 奈良先端大学のチームは、これまでの研究開発で機械学習やコンピューターグラフィックス・コンピュータービジョンの基盤技術を保有している。一方イマジカグループとオー・エル・エム・デジタルは、アニメーション制作技術とそのノウハウを保有する。制作技術とディープラーニング合わせることで、自動彩色を実現した。
 今回の技術では、まずアニメのキャラクター設定の絵を入力する。ディープラーニングにより実現した画像の領域抽出のアルゴリズムが、描かれたそれぞれ絵のかたちを認識することで、適切な色彩を選択する。日本アニメの制作に特化した自動彩色技術は世界初になる。

 開発にあたっては、自動彩色の精度を下げる要因となる情報削除や、着色すべき領域をはみ出した色塗りの補正技術を追加することで精度を上げたという。一方で、現在の技術は予備研究段階としている。実際の制作現場の投入はまだ先になりそうだ。
 今後はさらに自動化作業の精度改善をし、制作現場での実証実験も実施する予定だ。2020年を目標に実用化を目指す。
 また研究内容は12月4日から7日まで東京有楽町の国際フォーラムで開催されるSIGGRAH ASIA 2018 にてポスター発表される。

 アニメーション制作では、やはり人手がかかる動画作業でも、主要な絵をつなぐ中割の描画を自動化する制作ソフト「CACANi(カカーニ)」が開発されている。こちらは2017年頃より現場に試験的に投入している。アニメーション制作はどこまで自動化できるのか、本当に自動化できるのか。アニメ関係者から注目を浴びそうだ。

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