「もっと伝わりやすく、もっと多くの人に」 湯浅政明監督、東京国際映画祭で新作を語る

湯浅政明監督

 2018年10月25日より六本木などを会場に第31回東京国際映画祭が始まっている。国内最大の国際映画祭だ。映画祭のアニメーションでの目玉は、いま世界中から注目を集める監督・湯浅政明の特集だろう。映画監督デビュー作『マインド・ゲーム』から始まる3本の長編に、シリーズ番組『Devilman crybaby』、さらに自選短編集などそのキャリアを一望する。
 特集のハイライトとなったのが、28日の『夜明け告げるルーのうた』の上映と監督トークだろう。この場で、これまでほとんど語られることのなかった次回作のタイトルと概要が湯浅監督自身から語られたからだ。

 最新作のタイトルは『きみと、波にのれたら』。21歳の正義感の強い消防士の青年と、サーフィンが大好きな女子大学生のラブストーリーだという。スタッフは明かされなかったが、キービジュアルに描かれた二人のイラストのオシャレな雰囲気は若い世代にアピールしそうだ。
 監督は本作が海を描く点で『夜明け告げるルーのうた』とつながっていると話す。また『ルー』では描かなかったラブストーリーを描くことで、『ルー』よりはうえの世代に向けた作品となると説明する。前作と連続すると同時に、新たな挑戦もある。

 湯浅監督によれば、「真っ当なラブストーリー」、「基本ラブコメ」とのこと。これまでは大胆かつひねりの効いた演出や映像表現を得意としてきただけに、思わぬ正統派宣言にファンは驚かされるかもしれない。
 その根底には、湯浅監督の自身の作品を出来るだけ多くの人に観て欲しいという気持ちがあるようだ。今回の『夜明け告げるルーのうた』の上映についても、より多くの人に作品を観てもらう機会になったと、喜びの挨拶から始まっていた。そのうえで『きみと、波にのれたら』について、「これまでよりもっと伝わりやすい作品になっている」と紹介した。

『きみと、波にのれたら』の公開は、2019年初夏。東宝映像事業部にて全国公開を予定している。2019年の期待の一本になることは間違いない。
 また現在の制作状況については、絵コンテが終り、絵を作る作業に入っているとのことだ。また少し遅れているとも。それでも2017年に『夜は短し歩けよ乙女』、『夜明け告げるルーのうた』を相次いで公開。さらに2018年初頭に『DEVILMAN crybaby』全10話が配信開始と、現在の日本のアニメーション映画監督としては、際立って仕事が早い。
『きみと、波にのれたら』も2017年10月に『DEVILMAN crybaby』が完成した後にとりかかったというから、着手からまだ1年だ。2019年初夏公開であれば、1年半でオリジナル企画の映画が完成することになる。ハイクオリティの作品をスピード感を持って世に届けるのも、湯浅監督の特筆すべき才能かもしれない。

『きみと、波にのれたら』 https://kimi-nami.com/2019年 初夏公開

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