「スーパーマリオ」アニメ映画 任天堂と米国・イルミネーションが共同開発

任天堂/イルミネーション

 アニメーション映画の世界的なヒットメーカーが、グローバルで大人気のゲームキャラクター「スーパーマリオ」を主人公にした劇場アニメーションを制作する。そんな夢のようなプロジェクトが動き出す。米国の映画製作会社イルミネーションと任天堂は、2018年2月1日、「スーパーマリオ」のアニメーション映画の共同企画開発開始を発表した。
 プロジェクトのプロデューサーには、イルミネーションの代表であるクリス・メレダンドリ氏と任天堂の代表取締役フェローの宮本茂氏が共同で務める。両社それぞれのクリエイティブとプロデュースの顔が手を組む、大掛かりなチームとなった。プロジェクトの大きさを感じさせるのに十分だ。
 映画製作にあたっては、任天堂とイルミネーションの親会社であるハリウッドのメジャースタジオであるユニバーサル・ピクチャーズが共同出資する。またユニバーサルは映画の全世界配給を担当することが決まっている。

 「スーパーマリオ」は1983年に、任天堂が発売したゲームソフトの主人公として誕生した。大ヒットとなったゲームソフトのキャラクターはその後も数多くのゲームに登場し、任天堂の顔として世界中に愛されてきた。1993年には米国で実写化もされたが、アニメーションの大作映画化はこれまでにない。
 一方イルミネーションは、2007年にクリス・メレンダンドリ氏が設立した。歴史は短いが、特にCGアニメーションで「怪盗グルー」シリーズ、『ミニオンズ』、『SING/シング』などの世界的大ヒットを次々に創り出している。ディズニー/ピクサーと並ぶアニメーション映画のトップ企業となっている。現在、世界で最も勢いのあるアニメーション会社と言っていいだろう。

 「スーパーマリオ」のような大型キャラクターの突然のハリウッド映画化企画は驚きだが、これは近年の任天堂の会社戦略の方向性の変化も理由にありそうだ。ゲームソフトの中だけでなく、人気キャラクターの多角的な活用を目指すというわけだ。映画自体が大きなビジネスになるだけでなく、世界規模の映画により「スーパーマリオ」の認知度をさらに高めることが可能になる。
 任天堂は大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン内に、「SUPER NINTENDO WORLD」をオープンすること決めている。すでに建設が進んでいる。テーマパークの展開は、日本だけでなく海外も視野に入れている。ここでもパートナーはユニバーサルとなっている。
 ユニバーサルにとっては、任天堂の人気キャラクターは大きな集客が期待出来るビッグコンテンツ。一方で映像部門やテーマパーク部門を持たない任天堂は、ビジネスパートナーとして組みやすい。ゲームとキャラクター、映画とテーマパーク、お互いを補完することで大きなビジネスが可能になる。

 映画プロジェクトが、任天堂とユニバーサルの共同出資となるのも大きい。これまで日本は人気マンガやアニメ、ゲームを原作・原案として数多くハリウッドの映画会社に提供してきた。しかしその多くは権利の売り切りで、映画製作に加わることはほとんどなく、利益も翻案権の販売などに限定されてきた。
 しかし共同出資となれば、映画のヒットは日本側の利益にダイレクトに結びつく。先頃、東宝も映画『ゴジラ2』、『名探偵ピカチュウ』、実写版『君の名は。』での海外共同製作を発表、製作投資をすることを明らかにしている。日本コンテンツのハリウッド映画化では、コンテンツだけでなく、金も、口もだす。そんな新しい時代が始まっているのかもしれない。それを支えるのは、日本コンテンツの強さと言っていいだろう。

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