アニプレックス アニメ配信で全欧州カバー目指す ロシア語配信スタートにメドベージェワ選手が応援

エフゲニア・メドベージェワ選手

 アニメ企業のアニプレックスは、フランス現地法人Wakanim SASを通じて、ヨーロッパ地域で日本アニメの配信ネットワークを拡大している。このほど新たにロシア語圏での日本との同時配信を開始した。配信タイトルには、『グランクレスト戦記』、『カードキャプターさくら クリアカード編』、『三ツ星カラーズ』、『Fate/Apocrypha』など国内外で人気のアニメが多数含まれている。
 近年、国内外同時配信が急激に普及することが、世界での日本アニメ人気を牽引しているとされる。しかし、そうした同時配信は、英語や中国語、スペイン語などが多かった。ロシア語で正規で視聴する機会は限定されていた。アニプレックスとWakanimはこれに挑戦する。
 一方、ロシア語圏での日本アニメの人気が西ヨーロッパや北米、アジアに追いついていないのも事実。正規配信の拡大が、日本アニメのファン拡大につながるかも気になるところだ。

 ロシア語配信のスタートにあたり、Wakanimは大物アスリートの協力を得ることになった。ロシアの人気フィギュアスケーターで世界選手権女子シングル金メダリストとして有名なエフゲニア・メドベージェワ選手である。
 メドベージェワ選手は、日本のアニメを彷彿させる衣装で試合に挑んだり、SNSへの作品の感想の書き込みなどで、大の日本アニメファンとして知られる。そこで今回Wakanimに応援メッセージを寄せ、日本のアニメとWakanimでの視聴を薦める。ロシア語版のサイトでは、ロングインタビューにも答えている。Wakanimにとっては強力な助っ人になりそうだ。

 Wakanimは2009年に、日本アニメをインターネットで正規配信する会社としてフランス・リールで立ち上げられた。無料で日本アニメが楽しめるほか、月5ユーロを支払うと広告がなくなり、高画質での視聴が可能になる。2015年に日本のアニプレックスが資本参加し、現在はソニー・ミュージックのグループ会社となっている。
 海外ではNetflixや日本アニメに特化したクランチロールといった動画配信のライバル企業が多い。そのなかで他社がまだ充分に市場開拓していないフランス語圏、ドイツ語圏、さらに北欧で着実にユーザーを獲得している。
 今回はやはり他社がまだ進出仕切れていないロシア語圏に狙いを定めた。世界でロシア語を使う国は、人口約1億5000万人のロシアのほか、9400万人のベラルーシー、カザフスタン、キリギスタンなどで2億6000万人にも達する。このほかウクライナをはじめとする旧ソビエト連邦地域で広く話されており、ロシア語人口はかなり多い。

 Wakanimのカバーする地域は、ヨーロッパ・北米・アフリカのフランス語圏全域、ドイツ語圏、北欧からロシアへと広がった。しかし、Wakanimの目標はさらに大きい。2019年には全欧州をカバーする予定だという。
 しかし全欧州をカバーするには、イタリア語、オランダ語、ポーランド語などよりマイナーな言語への対応が必要になり、難易度があがる。さらに既に競争が激しくなっている英語、クランチロールやNetflixが得意としているスペイン語も含まれる。ここでどう戦うのかが鍵だ。
 一方で、英語、スペイン語がカバー出来れば、ヨーロッパ・アフリカ以外の地域への進出も視野にはいる。今後のWakanimの事業展開は、グローバルのアニメ配信の潮流にも影響を与えそうだ。

関連記事

アーカイブ

カテゴリー

ピックアップ記事

  1. 第2回新潟国際アニメーション映画祭
     今年3月に初開催されて話題を呼んだ新潟国際アニメーション映画祭が、2024年3月に第2回を迎える。…
  2. 「アニメーションの表現」
     2023年10月23日から11月1日まで開催されている第36回東京国際映画祭は、昨年より上映本数、…
  3. 『いきものさん』© 和田淳・ニューディアー/東映アニメーション
     日本を代表するアニメーション作家として、いま“和田淳”を筆頭に挙げる人は多いだろう。2010年に『…
ページ上部へ戻る