細田守監督の最新作『未来のミライ』発表記者会見 「家族はひとつの作品では描ききれない」

『未来のミライ』発表記者会見

 2017年12月13日、東宝本社にて、細田守監督の3年ぶりの劇場映画の発表記者会見が実施された。会見には、細田守監督と企画・制作をするスタジオ地図の代表取締役である齋藤優一郎プロデューサーが登壇した。
 ファンが待ちわびる新作のタイトルは、『未来のミライ』。都会の片隅の小さな家に住む男の子・くんちゃんと、その生まれたばかりの妹・ミライちゃんが大きくなった少女となって未来からやってきて、物語を織りなす。
 主人公はわずか4歳、キービジュルには小さくて可愛い男の子と、それより年上の女子学生に見える妹という不思議な絵が描かれている。ここからどんな世界、冒険、ストーリーが飛び出すのかは想像もつかない。細田監督は、監督に加えて原作と脚本も担当する。まさにゼロから本作を創り上げている。
 
 細田守監督は、『未来のミライ』のアイディアを自身の子どもを見ている中で得たという。「妹ができて、妹に両親の愛を奪われた4歳の男の子が愛を求めて彷徨う」と作品を説明する。可愛い絵とは対照的に、テーマは少しばかりシリアスだ。また「小さな子どもの目線から妹を見た時に、そこから世界が広がる新鮮な感動。そんな視点を共有できたら」とも話す。可愛い子どもだけでない普遍性がそこにあるようだ。
 これまでの作品でたびたび描かれてきた家族は、今回も大きなテーマとなっている。「“家族”を描き続けるのは、描ききれてないから。それはひとつの作品で描けるテーマでない」と、細田監督は説明する。『サマーウォーズ』の大家族、『おおかみこどもの雨と雪』の子育てをする母、『バケモノの子』の誰でも父になれる、今回は「“兄妹”って何? 」がポイントになる。細田作品を観続けてきたファンであれば、『未来のミライ』はより楽しめに違いない。

 海外でも人気の高い細田守監督の最新作だけに、記者会見ではフランスや韓国の記者からの質問もあり、注目の大きさを感じさせた。
 海外での評価や反応について細田監督は、映画祭などに参加することが、日本以外の世界の人々が映画に何を求めて、何を欲しているのか知るきっかけとなっていると話す。細田作品は一見はとてもドメステックでありながら、グローバルで普遍性を持つ。監督の海外での経験が、作品にどこか反映しているのかもしれない。

 齋藤プロデューサーも、海外ファンに向けた施策を積極的に打つ。映画配給権のセールスは2017年初夏のカンヌ映画祭からスタートしており、現在までにすでに57ヵ国に販売した。さらに北米やフランスなどでは、まさに交渉中。日本公開まで、その数はさらに積み上がりそうだ。
 また配給権のセールスにあたっては、映画であるからにはまず映画館で観て欲しいと、テレビや配信だけでなく、映画公開をすることにこだわった。『未来のミライ』は、これまでの細田作品以上に各国の劇場のスクリーンに登場することが増えそうだ。

 本編は100分程度とこれまでの作品よりやや短い。「短くなって楽になったかと言えば、全くそんなことはない」と齋藤プロデューサー。現在は、作画作業と声をあてる役者のオーディションを実施中とのこと。そして「制作はギリギリまでかかるが、絶対に間に合わせる。また、一番いいかたちで世界に出していきたい」と、意気込み十分だ。
 そして細田監督は最後に「チャレンジの一個一個が大切で、これが結実した時が面白い。見応えのあるものが出来る気配がする。期待して観て貰えるとうれしい」と、こちらも自信に満ちた言葉で締めくくった。
映画公開は2018年7月20日。残り7ヵ月を楽しみに待ちたい。

『未来のミライ』
2018年7月20日(金)公開
http://mirai-no-mirai.jp/

監督・脚本・原作: 細田守
作画監督: 青山浩行/秦綾子
美術監督: 大森祟/髙松洋平
プロデューサー: 齋藤優一郎
企画・制作/アニメーション映画制作: スタジオ地図

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