アニプレックス、実写映画配給 実写「ここさけ」「プリンシパル」の2本で挑む

実写映画『心が叫びたがってるんだ。』

 アニメ製作会社のアニプレックスが、アニメに続き実写映画のビジネスに本格的に乗り出す。アニプレックスは2017年、2018年に向けて2本の実写映画の配給をする。2017年7月22日全国公開の実写映画『心が叫びたがってるんだ。』、2018年公開の『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』である。
 劇場配給は作品を全国の映画館の上映スケジュールにブッキングする仕事だ。興行収入のうち一定割合を配給手数料として受け取る。興行会社との交渉やプロモーションの企画や立案なども必要とされ、専門性が高い。このため東宝や東映、松竹の大手映画会社、ディズニー、ワーナーなどのハリウッド系映画会社が市場シェアの大半を握っている。

 アニプレックスは、近年、自社製作のアニメを中心に配給事業を積極的に手掛けている。配給本数が増加しているだけでなく、2015年にはアニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』が興行収入11.2億円とヒットの目安される10億円を超えた。さらに2017年2月公開で現在も上映中の『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』が興収23億円越えと大ヒットになった。
 配給事業で重要な公開時の劇場館数でも100館以上を押さえるようになり、ビジネスが拡大している。アニメに関しては、すでに主要配給会社の一角に喰い込んだ。

 そうしたなかでアニプレックスが新たな事業分野として目をつけたのが、実写映画である。これまでにも花澤香菜主演の『君がいなくちゃだめなんだ』などの配給の経験はあるが、少数の劇場限った小規模なものだった。しかし、実写映画『心が叫びたがってるんだ。』、『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』では、ともに全国規模の公開を目指すことになりそうだ。
 劇場のブッキングは、アニメ映画での配給で培ったノウハウが活かせる。近年は、一般層にも広がっているとされるアニメファンの実写映画への取り込みも期待できる。

 実写映画の本格参入第一弾となる『心が叫びたがってるんだ。』の原作は、アニプレックスのオリジナル企画による劇場アニメだけに、大きな関心を集めるのは間違いない。さらに主演の中島健人は、ジャニーズ事務所Sexy Zoneのメンバー。アニメファンとは異なる若い女性層も取りにいっているのが判る。
 一方、『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』は、いくえみ綾の人気少女マンガ『プリンシパル』を原作にする。こちらもジャニーズWESTの小瀧望を主演に据えて、10代、20代の女性がメインターゲットになっている。少女マンガを原作に若手の人気役者・タレントを主要キャストに並べるのは、近年の邦画の大きなトレンドのひとつで、人気のジャンルである。アニプレックスはこの分野に真正面から勝負を挑む。マンガ原作映画は、アニメ映画とも親和性が高いとみられ、この特徴をどこまで活かせるかが成功の鍵になりそうだ。

実写映画配給でも成功をすれば、新規参入プレイヤーの少ない劇場配給のビジネスに新風が巻き起こる。それは業界の活性化にもつながるだろう。
 アニメ映画配給事業が今後どこまで伸びるのか、実写映画がそれに続くのか。アニプレックスの映画事業は引き続き関心を集めそうだ。

『心が叫びたがってるんだ。』
http://kokosake-movie.jp/
配給:アニプレックス 2017年7月22日(土) 全国ロードショー

『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』
http://principal-movie.jp
配給:アニプレックス 2018年 全国ロードショー 

関連記事

アーカイブ

カテゴリー

ピックアップ記事

  1. 第2回新潟国際アニメーション映画祭
     今年3月に初開催されて話題を呼んだ新潟国際アニメーション映画祭が、2024年3月に第2回を迎える。…
  2. 「アニメーションの表現」
     2023年10月23日から11月1日まで開催されている第36回東京国際映画祭は、昨年より上映本数、…
  3. 『いきものさん』© 和田淳・ニューディアー/東映アニメーション
     日本を代表するアニメーション作家として、いま“和田淳”を筆頭に挙げる人は多いだろう。2010年に『…
ページ上部へ戻る